9条改憲は自公に距離、消費増税・原発・くらしは? 各党政策を比較

最終更新日:2017年10月14日

画像:国会議事堂=朝日新聞

9条改憲は自公に距離、消費増税・原発・くらしは? 各党政策を比較

 衆院選が公示されました。突然の解散に野党再編と、異例づくめの選挙戦ですが、大きな争点の憲法9条改正や原発政策では、与党でも立ち位置が異なるなど対立の構図が複雑になっています。主な政策について、公約や党首の発言などから各党のスタンスをまとめました。(withnews)

主要政策をめぐる各党の立ち位置

【憲法改正】自民、希望・維新の協力に期待

 憲法改正が主要争点となっている衆院選。注目を集めているのが、9条に自衛隊を明記するかどうかをめぐる議論です。

 そのきっかけは、安倍晋三首相(自民党総裁)が5月に提案した9条への自衛隊明記案でした。自民党内にも異論があったものの、首相の強い意向を反映し、衆院選に向けた自民党公約には自衛隊明記を含めた「改憲4項目」(ほかは教育の無償化・充実強化、緊急事態対応、参議院の合区解消)が盛り込まれました。

 首相周辺には選挙後に改憲が前に進むことへの期待があります。念頭にあるのは、希望の党や日本維新の会との連携です。

 希望の党の小池百合子代表は、首相の自衛隊明記案にこそ否定的ですが、公約には「9条をふくめ憲法改正論議をすすめる」と書き込み、議論には前向きの姿勢を見せています。

 日本維新の会も、「国際情勢の変化に対応し、国民の生命・財産を守るため」として、憲法9条の改正を公約に盛り込みました。日本のこころも改憲に積極的です

 一方、連立を組む公明党は9条改正には慎重姿勢を示し、距離を置いています。首相提案に対し、公約でも「意図は理解できないわけではないが、多くの国民は自衛隊の活動を支持し、憲法違反の存在とは考えていない」と強調しています。

 また、首相の改憲案に反対する立憲民主、共産、社民の3党は、危機感を募らせています。

 公約に「専守防衛を逸脱し、立憲主義を破壊する、安保法制を前提とした憲法9条の改悪に反対」と明記した立憲民主党。枝野幸男代表は公示日の演説で、安倍政権が15年に安全保障法制を成立させたことについて、「安倍さんは憲法の認める個別的自衛権を越えて、領土・領海を攻められていないのに戦争をしようとしている」と批判しました。

 共産党の志位和夫委員長も街頭演説で、自衛隊明記案への反対を訴えました。「自衛隊を追認するだけではない。無制限の海外での武力の行使が可能になってしまう。断固ストップの審判を下そう」。社民党も公約で「平和憲法は変えさせない」と反対を訴えています。

【消費税】増税実施と使途拡大を掲げる与党と、凍結・中止を求める野党

候補者や応援弁士の訴えに耳を傾け、拍手する有権者ら=10月10日、東京都八王子市

 2019年10月に予定する消費税率10%への引き上げをめぐっては、増税実施と税収の使途拡大を掲げる与党と、増税の凍結・中止を求める野党が激突。公示日の第一声でも主張が繰り広げられました。

 自民党総裁の安倍首相は、増税で増える5兆円超の税収の使い道を広げ、約2兆円を教育無償化などに充てると宣言。第一声では「借金返しに多く使われたものを子どもたち、子育て世代への支援に使っていく」と訴え、幼児教育の無償化などの目玉政策をアピールしました。

 使途については、公明党の山口那津男代表も「私立高校の授業料の実質無償化を進める」と強調。しかし、いずれも使途拡大で悪化する財政をどう立て直すかには触れませんでした。

 これに対し、東京都知事でもある希望の党の小池代表は「『いざなぎ超え』と言われるが、好景気の実感ありますか?」と聴衆に問いかけ、増税の「凍結」を主張。都で取り組んだ歳出削減を紹介し、凍結に伴う税収減は解決できるとしました。

 同じく「凍結」の日本維新の会の松井一郎代表は、増税の前に議員報酬削減などを進めるべきだと唱えます。立憲民主党や日本のこころも、消費低迷などを理由に増税延期を求めました。

 共産党、社民党は消費増税自体に反対です。共産党の志位委員長は「暮らしを壊す、経済を壊す大増税はきっぱり中止を」と訴え、富裕層や大企業への課税強化を主張しました。

【原発再稼働】第一声で触れぬ与党、共・立・社は「反対」 希望「2030年ゼロ」

再稼働中の関西電力高浜原発3号機(左)と4号機(右)

 原発再稼働を進める安倍政権ですが、与党党首は公示日の第一声で原発政策に触れませんでした。

 安倍首相は東京電力福島第一原発事故に見舞われた福島市内での第一声で「首脳会談のたびに『福島の農産物は安全』と話をした」などと強調しましたが、再稼働には触れずじまい。公明党の山口代表も同様に再稼働への言及はありませんでした。

 自民党は公約で原発を「ベースロード(基幹)電源」と位置付け、新規制基準に適合した原発の「再稼働を進める」と記しています。首相は公示前のテレビ番組で「原発ゼロは責任あるエネルギー政策とは言えない」と批判しましたが、政権の一角の公明党は年限を区切らないものの「原発ゼロを目指す」と公約に明記しています。

 希望の党は足元での再稼働は「是としている」(小池代表)と認めつつ、「2030年までの原発ゼロ」を掲げます。第一声で小池代表は「ゼロにする工程表をしっかり作っていく」と訴えました。維新は一定の条件を満たせば原発の再稼働を認める立場です。

 これに対し、立憲民主党は公約で「再稼働は現状では認められない」と掲げ、「既存原発の再稼働に反対」とする社民党、「即時原発ゼロ」の共産党と足並みをそろえます。共産党の志位委員長は第一声で「どんな世論調査を見ても、再稼働反対は5割から6割。今や国民的合意」と力を込めました。

【働き方改革】「高プロ」制度 自公、触れず

 違法な長時間労働や過労死が社会問題化するなか、各党とも「働き方」をめぐる政策も掲げています。

 自民、公明両党は長時間労働の是正や非正社員の待遇改善を図る「同一労働同一賃金」の実現を訴えます。

 安倍政権は残業時間の罰則付き上限規制と、専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」を一本化した労働基準法改正案など「働き方改革関連法案」を臨時国会に提出する方針でしたが、冒頭解散で流れました。

 自公は公約で「働き方改革を進める」とうたいますが、野党や連合が批判する高プロには触れておらず、「争点隠し」ともみられかねません。

 高プロを「残業代ゼロ法案」だと批判する社民党と共産党は「断固反対」と強調します。立憲民主党も公約には記載しませんでしたが、高プロに反対の立場です。連合の支援を受ける候補がいる希望の党は、長時間労働の法規制を訴えていますが、公約では高プロに触れませんでした。

 日本維新の会は「成果で評価する働き方」や「解雇ルールの明確化」を掲げます。労働市場の流動化とセーフティーネットの充実を進めるとも主張。ほかの政党が雇用環境の改善に軸足を置くなか、独自色を出しています。

【社会保障費】抑制策乏しく、「バラマキ合戦」に

候補者らにスマートフォンを向ける人々=10月10日、さいたま市の大宮駅前(画像を一部加工しています)

 社会保障では、与党は子育て支援に重点を置いています。自民党は従来の高齢者中心の施策から「全世代型」への転換を掲げ、消費税率10%への引き上げによる税収増を財源に、すべての3〜5歳児と低所得世帯の0〜2歳児の保育・教育を無償化すると主張。公明党はすべての0〜5歳児の保育・教育の無償化を訴えます。

 野党は、アベノミクスで格差が広がったとして、その是正を掲げます。希望の党は、基礎年金や生活保護、雇用保険の代わりに、最低限の生活費を支給する「ベーシックインカム」の導入を打ち出していますが、制度の詳しい中身は示していません。

 立憲民主党は保育・介護分野の賃上げや、医療・介護の自己負担の軽減などによる中間層の暮らしの立て直しを掲げます。枝野幸男代表は第一声で「格差が拡大し、もう限界ではないのか。まっとうな暮らしを取り戻したい」と訴えました。

 共産党は大企業や富裕層への課税強化などで17兆円の財源を確保し、社会保障を拡充すると訴えます。

 与野党ともに財源が不明確な政策が多い一方、高齢化で膨らむ社会保障費の抑制策にはほとんど言及がなく、「バラマキ合戦」の様相を呈しています。

【教育】無償化、財源に与野党の違い

 教育については、多くの党が「教育無償化」を掲げます。

 自民党は大学などの高等教育で返済のいらない給付型奨学金や授業料の減免を増やすと主張。公明党はさらに一定の年収に満たない世帯への「私立高校授業料の実質無償化」もうたい、安倍晋三首相も「検討していきたい」と応じます。財源はいずれも消費増税による税収増分としています。

 野党は財源に違いがあります。維新は「議員報酬・議員定数の削減」「国家公務員の人件費・人員削減」によって幼児教育や大学授業料無償化などを実現する、とうたいます。

 児童手当や高校の授業料無償化で所得制限の廃止を掲げる立憲民主党は、所得税や相続税改革などを通じた「再分配機能の強化」で賄うとしています。

公示前に討論する各党の党首たち

【森友・加計】情報開示・真相究明、野党が主張

 森友・加計学園問題で安倍首相を追及する野党は、情報開示や真相究明を公約に盛り込みます。

 希望の党は「国民は十分に納得していない」(小池代表)として、政策集に「『隠蔽ゼロ』の断行」を明記しました。検証に必要な文書が廃棄されたことから、公文書管理法の改正で行政文書の恣意的な廃棄を禁じることや、森友・加計問題に関する全情報の公開を打ち出しています。

 共産党は、安倍政権を「こんな異常な国政私物化疑惑にまみれた政権はかつてない」(志位和夫委員長)と批判。党の重点政策の一番目に森友・加計問題への対応を掲げました。安倍昭恵氏ら関係者の証人喚問などによる真相究明を主張する。

 立憲民主党も「徹底して行政の情報を公開する」として、情報公開法の改正による行政の透明化や政府の情報隠蔽阻止を公約に明記。社民党も国家戦略特区の廃止を訴える。

 これに対し、自民党の公約には森友・加計問題への具体的な言及はなく、「国家戦略特区は透明性を向上」「行政文書の適正な管理」を掲げました。公明党は、公文書管理の厳格化と適切な情報公開体制の整備を図ることを打ち出しています。

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