「すべての望まない受動喫煙を排除する」―― 塩崎厚労相が健康増進法改正案について語る

最終更新日:2017年7月20日

画像:塩田亮吾

「すべての望まない受動喫煙を排除する」―― 塩崎厚労相が健康増進法改正案について語る

 他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙の対策を強化する健康増進法の改正案は、先の通常国会で先送りされた。例外的に喫煙を認める飲食店の線引きをめぐり、厚労省と自民党の間で、折り合いがつかなかったためだ。2020年の東京五輪を控え、法案の意義や今後の見通しはどうなっているのか。塩崎恭久厚生労働相に聞いた。聞き手は評論家の荻上チキ氏。(Yahoo!みんなの政治)

――塩崎大臣は以前、喫煙者だったそうですね。

 はい。吸っていました。1983年、30代の初めでやめましたが、何度となく禁煙に失敗しました。今思えば、子どものいる前で吸っていたこともある。息子たちには謝って反省しています。禁煙のきっかけは、ある障害を持った先輩に「君、まだタバコなんて吸っているのか」と言われたことです。それ以来、一度も吸っていません。

――世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)は「たばこのない五輪」を進めており、対策は開催国の責務だと言われています。

 2008年の北京からずっと開催国は屋内全面禁煙です。次の平昌では、原則禁煙で喫煙ルームは可。問題になるのは飲食店の扱いで、自民党の案だと、100平方メートル以下は喫煙可能で、東京では85%以上が「例外」扱いになってしまいます。ほとんどの店で吸えてしまう。そんなことになれば、WHOとIOCの合意から10年目にして、日本が伝統を破るということになってしまう。それはいかがなものか。世界の標準からすれば厚労省案も甘いと批判されているくらいです。

受動喫煙対策の各国比較(厚生労働省作成)

――厚労省案でも他国より緩やかな規制なのに、自民党は一層の緩和を求めていると。

 自民党案は喫煙店であることの表示義務を課して利用者が「選択」をすればいいというものです。ですが、自分の意思とは関係なく入店しなければいけない場面はあります。例えば会社で忘年会に行く時に、会場が喫煙可だった場合に、妊娠している女性や密かにがんと闘っている人が、行かないという選択ができるのか。また、営業担当の社員が取引先の社長に連れて行かれた店が吸える店だったとしても「私、ダメなんです」と言えないじゃないですか。

 また、従業員の方々は職場を選べない場合がある。たばこが理由で転職しなければいけないというのはおかしい。そういうことを考えたらあらゆる人を受動喫煙の被害から守らなければいけない。それが世界の常識でもあるわけです。自民党案では85%が吸える店になる。それはさすがにないだろうということで折り合いませんでした。

――なぜ反発が大きいのでしょうか。

 いま喫煙者は2割だと言われています。国会議員の喫煙者もそのぐらいの割合だと思います。規制を一番心配されているのは飲食店の方々です。売上が減るんじゃないかと。ですが、規制した国のほとんどでは売上は減っていない。むしろ増えているという結果もある。なぜなら、8割の吸わない人の中で禁煙なら行こうという人が増える。2割の中の一部は行かなくなるかもしれないが、どちらが多いかという話です。ところが国会議員は声の大きい人たちに引っ張られる。心配されている飲食店の方々、たばこ販売店、たばこ耕作者の皆さんに引っ張られているというところもあると思います。

――たばこ業界からのロビイングの影響はあるのでしょうか。

 今朝もがん対策推進協議会の方々の話を聞きましたが、そういう指摘をされる方もいました。ですが、健康被害ということを考えて議員は国民の声に耳を傾けるべきです。8割が非喫煙者という中で、サイレント・マジョリティは受動喫煙対策に賛成だと思います。私も地元に帰ると、「(受動喫煙対策を)頑張ってね」と言われます。確かに飲食店やたばこ販売者の方々は複雑な顔をしますが、丁寧にデータを示しながら「そんなに影響はありませんよ」と説明するしかありません。

――たばこ業界がメディアに広告を出しているから、たばこ規制の論調がなかなか取り上げられないという指摘もあります。

 大臣になるまでは、テレビでこの問題をしゃべったこともありませんでした。日本はWHOの「たばこ規制枠組み条約」の批准国です。この中に、たばこ生産会社は政策に影響を与えてはいけない、宣伝もしてはいけないということになっている。日本ではJTのテレビCMが平気で流れている。これは世界から見ればびっくりする話なんです。たばこそのものの宣伝はしていませんが、喫煙ルームを映していますから、事実上たばこの宣伝と同じです。これは条約違反と言わざるを得ません。

 条約を仕切っている外務省が、きちっと、たばこ業界の監督官庁である財務省に言わなければいけないんだと思います。

――たばこ規制の飲食店への影響は懸念するほどではないというデータもあります。

 食べることが主目的で、煙を楽しみに行っているわけではないですから。美味しいものが食べたいということが満たされるのであれば影響は少ないということなのだろうと思います。特に和食というのは非常に繊細な、味と香りと見た目を楽しむものですから。それが煙で害されるということはないほうがいいのだろうと思います。

 英国は東インド会社以来の「たばこの国」でしたが、2006年に屋内全面禁煙になりました。このときも、パブとその応援団が大反対をしました。ですが、結局は大差で法案が通った。その後、パブが大量倒産したかというとそんな話は聞かない。みんな店の外で吸っているのです。

――先の国会では法案が先送りになりました。今後の見通しをどうみていますか。

 残念だったのは、案が出てから自民党の部会でたった10分少々の1回しか説明できなかったことです。政策というのは人の命にかかわることですから、ありとあらゆる意見を聞いて、議論を重ねて結論にたどり着くことが大事です。がん患者の方などの話を聞いていると、周りに知られずに闘っている方が多い。そういう方々が「黙っていても守られる」国にしていかなければなりません。「すべての望まない受動喫煙を排除する」。そうでなければ安心して暮らせる国になりません。そういうことを丁寧に説明する機会を作っていくことが何よりも大事だと思います。

――大臣という立場が変わったとしても、一議員としてこの問題に取り組みますか。

 当然です。また、厚生労働省は命と健康を守るという責任があります。大臣が変わろうとも明らかな健康被害があることを許す厚生労働省になってはいけないと思います。私が変わったとしても、次の大臣は同じことを主張すべきだし、そうするんだろうと思います。公明党は早くから厚労省案で良いと言っていますし、残ったのは自民党。ここが議論を重ねていくことが必要だと思います。

――この問題についての安倍首相の積極的な意見はあるのですか。

 予算委員会では「大事な問題だ」ということは言っておられますが、はっきりと「この案で行け」ということはありません。それは、党内の議論が熟していなかったからだろうと思います。

※記事は7月19日に放送された番組の内容を再構成したものです。

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番組は35秒ごろから開始。

[写真] 撮影:塩田亮吾/ 写真監修:リマインダーズ・プロジェクト 後藤勝

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