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2006年5月に早稲田大学マニフェスト研究所が「開票事務の時間短縮」に取り組み始めたころは、「時間を数分縮めたところで何の効果があるのですか」とか「かえって職員の反感を買うことになるからマイナスではないですか」といった声が識者や行政の幹部から寄せられました。
ところが、改めて公職選挙法ならびに地方自治法を確認してみると、そのような姿勢がいかに自己中心的であるかがわかりました。公職選挙法第6条1では、「選挙が公平且(か)つ適正に行われるよう」に努めなければならないとしながらも、同条2で「選挙の結果を選挙人に対してすみやかに知らせるように努めなければならない」と定めているのです。
また、地方自治法第2条14、15では「地方公共団体は、事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」、「常にその組織及び運営の合理化に努める」と示されています。
つまり、行政には公平性に加えて経営の視点が必要とされており、「前例踏襲」ではなく、常に行政事務の適正化に努めなければならないのです。
午後10時以降の1時間短縮で、約10億円の人件費削減
「開票事務の時間短縮」がもたらす成果の1つとして、経費削減が挙げられます。通常、公務員は、午後10時を過ぎると超過勤務手当が加算されるため、深夜にわたる開票事務は人件費の大幅な増加につながります。その総額は実に全国の市区町村公務員全体で、約31億円にものぼるのです。
もし、全国で1804ある市区町村が開票事務の迅速(じんそく)化に取り組み、午後10時以降の1時間が短縮された場合、約10億円の人件費削減につながります。さらに、すべての市区町村の選挙において、平均して100万円ずつ経費削減が図られたと仮定します。通常、市区町村長の1期の任期である4年間には6回の選挙(衆参選挙、知事・県議選挙、市町村長・議員選挙)が執行されるため、約108億円の経費削減となります。
実際に迅速化に取り組んだ06年福島県知事選挙における同県相馬市の事例を見てみると、より具体的に成果がわかります。
| 福島県相馬市における開票事務迅速化の成果 |
| 選挙年月日 |
2004年9月5日 |
2006年11月12日 |
04年選挙との比較 |
| 選挙名 |
福島県知事選挙 |
福島県知事選挙 |
- |
| 立候補者数 |
2人 |
5人 |
+3人 |
| 有権者数 |
30,876人 |
31,062人 |
+186人 |
| 投票者数 |
14,731人 |
17,107人 |
+2,376人 |
| 投票率 |
47.71% |
55.07% |
+7.36ポイント |
| 事務従事者数 |
72人 |
62人 |
−10人 |
| 所要時間 |
61分 |
25分 |
−36分 |
| 執行経費決算額 |
875,151円 |
443,561円 |
−431,590円 |
| 1人が1分間で処理した票数 |
3.35票/分 |
10.80票/分 |
事務処理量
3.2倍 |
| 1人が1票処理するのに要した時間 |
17.9秒/票 |
5.6秒/票 |
効率性
3.13倍 |
| 1票あたりにかかったコスト |
59.4円 |
25.9円 |
−33.5円 |
| 1人が処理した票数 |
204.6票 |
275.9票 |
71.3票増 |
事務従事者 1人あたりの有権者数 |
428.8人 |
501人 |
72.2人増 |
上の表を見ると、職員1人が1分間に処理した票数は、前回(04年)と比較して3倍以上になっています。当然、作業効率の向上により、1票あたりにかかるコストも削減できています。このように、開票事務改革を行えば、職員数を増やさずに業務の効率性を高めることができ、経費削減へとつながることが実証されているのです。
開票の迅速化を目指し、職員が議論を行う(福島県相馬市) |
今、全国の自治体は行財政改革へのさまざまな取り組みをしていますが、改革の大きな障害となっているのが「前例踏襲」という意識です。「今までこの方法で行ってきたのだからこれでよい」という思い込みが、改革を阻んでいるのです。
選挙の開票事務は、部や課を超えて多くの職員が共通の目標として取り組むものです。正確で迅速な結果を知らせることは、住民サービス向上につながるだけではありません。開票事務を通じて、共通の目標を達成するためにはどのようにすれば良いかを考え、実行するマニフェスト型の事務執行を経験でき、このことが公務員の意識改革にもつながるのです。
7月29日の参議院選挙の開票事務を通じて、全国の市区町村でマニフェスト型の開票事務が行われ、真の自治体へと進化していくことを期待しています。 |