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日本の政治が変わる!! マニフェスト講座
2006年7月3日号

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Vol.20 小泉政権のマニフェストはどう評価されているの?(後編)

小泉純一郎政権は、日本の政治にマニフェストを取り入れた最初の政権といえます。では、マニフェストを取り入れた政治とは一体、どのようなものをいうのでしょうか。

私たち言論NPOはその定義を、「マニフェストの作成と実行が、一定のサイクルで行われる政治」としています。ここでいう政治サイクルは、政党の党首を選ぶところから始まります。党首選出後、政党が有権者に約束するマニフェストの内容が決まり、選挙に際しては、そのマニフェストを提示し、有権者に選ばれた政党が与党となります。そして、首相となった与党党首は、マニフェストで約束した政策を、政府の政策として位置づけ、実現を目指すのです。

言論NPOは、この政治サイクルがきちんと働いているのかをチェックするため、党首の誕生から政策実現までのすべてのプロセスを追跡し、マニフェストを評価しています。

政権誕生から2年半は合格点だったが……

言論NPOはこれまで、選挙時に各政党が有権者に提示するマニフェストの評価に加え、小泉政権のマニフェストの実績評価を3回行い、その結果を公開してきました。

参考:言論NPOの国政マニフェスト評価/総論


小泉政権誕生から2年半は高評価でした
小泉政権誕生から2年半は高評価でした

私たちが行った小泉政権への評価で合格点に達したのは、政権が誕生してからの2年半を評価した第1期評価(2001年4月〜03年10月)だけで、その後の第2期(03年11月〜04年5月)、第3期(04年6月〜05年8月)の評価はいずれも低い点となりました(各政策に対する実績評価の平均点は、1期目60点、2期目36点、3期目44点。満点は100点)。それはなぜだったのでしょうか?


私たちは、マニフェストを軸とした政治を日本に取り入れるうえで、小泉政権は重要な役割を果たしたと判断しています。第一期の評価が合格点(60点)となった最大の理由はその点にあります。小泉氏が自民党総裁となったのは、01年4月のことです。その時点では日本の政党はまだマニフェストを作成しておらず、政党が政策の実現に関して有権者と約束を交わすという視点そのものが希薄でした。さらに、自民党は派閥を中心とした、利益誘導型の政治を行っていました。そうした自民党の構造を壊し、国民と向かい合う首相主導型の政治を推し進めたのが、小泉首相でした。その意味では、小泉首相だからこそマニフェスト型の政治が可能となったともいえるのです。

しかし、私たちの小泉政権に対する実績評価は、第2期以降は「不合格」となってしまいました。厳しい評価となったのは、マニフェストがあいまいだったためです。

小泉首相は日本の改革を主張し、「官から民へ」「国から地方へ」という改革の理念を提案しました。私たちは、その理念自体は妥当であると判断しました。しかし、その改革の目的をどのように実現するのか? 目指している日本の社会はどのようなものなのか? という設計図が示されていないのです。

先送りされた諸問題

私たちの小泉政権に対する評価が第2期以降に厳しいものとなった理由はほかにもあります。私たちが特にマイナスに評価したのは、本来、マニフェストに書くべき多くの諸問題について触れず、問題を先送りしたことです。

たとえば、急速な少子高齢化というこれまでに例のない状況を迎える中で、日本は年金などを始めとする社会保障改革や財政再建、国と地方の関係の見直しなどを行わなければなりません。これまでの仕組みを大きく変更しなければならない状況下にあるわけです。ところが、04年の参議院選挙時の自民党マニフェストには、選挙で最大の争点となった年金改革について、「抜本改革をする」とだけしか書かれておらず、改革の中身の説明は十分に行われませんでした。また、選挙後に成立した年金改革法案は、数字のつじつまを合わせるだけのものでした。

その後、年金設計をする際に重要な指標となる合計特殊出生率は想定した水準を下回り、国民年金は高い未納率を隠すためにさまざまな不正な操作が組織的に行われていたことが発覚しました。

政府がどんなに「抜本改革はできた」と言っても、改革の前提は崩れ始めており、年金制度への国民の不信はさらに深まってしまいました。

参考:言論NPOの国政マニフェスト評価/年金(社会保障)

有権者がマニフェストの「質」を決める

以上のことから、私たちが肝に銘じなければならないことは、日本の政治を政治家にただお任せしていてはだめだということです。あいまいな公約を見て、「日本の政治はだからだめなんだ」とあきらめてはいけません。マニフェストは、私たちみんなが政治を選ぶための重要な材料であり、その材料の品質をよくするのも悪くするのも私たち次第です。


次の首相は、日本の「設計図」を示さなければなりません
次の首相は、日本の「設計図」を示さなければなりません

9月に自民党の総裁選挙が行われます。前述した政治サイクルで言えば、マニフェストを軸とした政治はまさに総裁選びから始まることになります。私たちはこの総裁選から、これまで以上に日本の政治を監視していくことが大切です。


まとめ

・ 小泉政権は日本の政治にマニフェストを取り入れるうえで重要な役割を果たしました。しかし、山積する諸問題にどう対処し、どのような社会を目指していくのかという「設計図」を提示できませんでした。

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用語解説

本文中の太字の語を解説しています。
マニフェスト
 (まにふぇすと)
派閥
 (はばつ)

筆者紹介

工藤 泰志
工藤 泰志
(くどう やすし)
1958年生まれ
横浜市立大学経済学部博士課程中退。
東洋経済新報社の「論争 東洋経済」編集長などを経て、現在、認定NPO法人言論NPO代表。
小泉政権のマニフェストや全政策分野の実行評価を3回公表。ウエッブでマニフェスト評価ブログ開設。マニフェスト評価の横綱。

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